神経系とトラウマ
目次
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# 前置き、心理セラピーとカラダ
# トラウマとは、未解放の負荷エネルギー
# トラウマから回復するということ、二つの要素
# セラピーの、二つの鉄則
# トラウマと回復の、関係性と性質
# 体からのアプローチ
# 再トラウマ化を防ぎ、回復へ向かう方法
・・ トラウマ化の段階
・・ トラウマセラピーへの耐性
・・ 器(神経系の耐性/適応力)を育てる
・・ いいところだけ、見ていてもトラウマ化される
・・ トラウマの解放は、振り子で起こる
・・ 感情や思考や想いから、体に残るトラウマの解放はできない
# なぜ感情や思考ではなく、感覚なのか?
・・脳の構成
・・神経系の3つのモード
・・3つのモードが与える、感情や思考への影響
なんでこんなに周りの刺激に弱いんだろう?
なんで、他人の感情がすぐ自分に移ってしまうのだろう?
心理セラピーや感情を扱うワークでなぜ、回復しないのか。
問題を見ていき、深く掘り下げることで、
なぜ回復しないのか。
時代の中で、
様々なワークは、
どのような変遷をたどってきたのか?
一部をご紹介しましょう。
新しい目線、別の視点をもって、
そのワークを、見てみると、、
やっぱりいいワークだと思うかもしれないし、
どうかと、疑問を持つかもしれません。
ここでは、私の体験から見た
ただ、一滴の提議です。
**
トラウマを扱うとき、
注意すべきことがあります。
しかし、それは
一般のセラピーや自己探求を続けてきた人にとっては、
自己との矛盾を感じるかもしれません。
ただ、ここでは、心理や感情ではなく、
体から見たトラウマの
事実のお話、、。
**
トラウマとは何か、
どのようにしてトラウマ化するか、、
それは、話が長くなるので、ここでは割愛します。(後ほど少しお話しします。)
(※こことか、こことか、ここのページを、参考にしてください。)
物理的な体、とくに神経系に特化してみてみると、
トラウマとは、体に閉じ込められた負荷エネルギーです。
(11:40から、しろくまをヘリで追いかけ、麻酔銃を打ち込みます。 13:18あたりで、しろくまが麻酔から覚める様子が撮影されています。)
簡単に言うと、こちらのしろくまくんが、
逃げ切れずに、凍りつき(ここでは麻酔)反応に至ったときに
起こった事は。。
それまで全力で逃げていた=神経系の活性化エネルギーがすごく高まっていた、、のが、
麻酔により、急激に身体システムが停止した=凍りつき状態(フリーズ、気絶)、、になりました。
このとき、さっきまで全力で活動していたエネルギーはどこにいったのか?
解放されたり、消費されたりしていません。
体の中に閉じ込められています。
麻酔から醒めるときに、(深呼吸したり、ブルブル震えたりして、、)
溜まっていた神経系の活性化エネルギーが、、
徐々に解放されていきます。。
これが、解放されずに体の中(神経系)を回り続けているとき、
トラウマ化されたということになります。
神経系には常に危機に瀕した状態を溜め込んでいます。
トラウマから回復するということは、
ひとつは、この神経系に溜まったエネルギーを解放する
ということです。
(※もう一つあり、そちらのほうがより大切です。)
**
トラウマ化されたときに、何が大変か?というと、
2つあります。
①神経系に高負荷のエネルギーが溜まって回り続けている
・ひとつは、先のに見たように、
この未解放のエネルギーが解放されずに
ずーっとトラウマの負荷がかかり続けた日常を送ることです。
この莫大なエネルギーを消費続けている、、と考えるだけでも大変そうですよね。
②神経系が柔軟性を失い、適応力を失った(少しの刺激ですぐに危機モードにシフトしてしまう)パターンになっている。
・もうひとつが、
この負荷エネルギーのために、神経系が柔軟性を失い、
世界に対応できなくなっていることです。これも、しんどい。
神経系が柔軟性を失っているとは、
どういうことか?
健康な神経系を持ったひとは、
外界の刺激(何か物音がした!)というときに、
神経系は活性化して負荷エネルギーが高まります。しかし、
周りの状況が安全であったなら(たとえば、ドアが開いたけど、危険はなかった。など)
自然と脱活性化し、負荷エネルギーは自動的に解放され、日常に帰ってきます。
しかし、
柔軟な神経系を失っているひとは、
外界の刺激に対して、安全を確認しても
脱活性化(自動的な解放)が行われず、、神経系の負荷エネルギーがどんどん溜まっていきます。
活性化して負荷が高まったら、自然と脱活性化し安全な日常に帰ってくる。
それが、健全な神経系なのです。これだと、ラクです。
人とやりとりしたり、社会生活が営めるようになります。
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つまり、トラウマ化された体、神経系を回復させるためには、
2つの観点が必要です。
・溜まった負荷エネルギーを解放すること。
・活性化して負荷が高まったら、自然と脱活性化し安全な日常に帰ってくる、、柔軟な神経系を取り戻すこと。
とくに、2つ目が大切です。
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なんでこんなに周りの刺激に弱いんだろう?
なんで、他人の感情がすぐ自分に移ってしまうのだろう?
この一つの答えは、
神経系の観点から見ると
上記のように、神経系の柔軟性にあると、いえます。
神経系の柔軟性を取り戻すこと、
これが、体から見た回復のキーとなるでしょう。
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さて、このとき
どうやって
トラウマから回復するのか、神経系から見た観点をご紹介しましょう。
これは、多くの心理セラピーの(神経系から見ると)間違えた、
考え方を説明することになります。
鉄則として、2つあげましょう。
・悪いところ(問題点、感情など)を掘り下げていかないこと!!!
・解放は、徐々に少しずつ。少しであるほど効果が有る。
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トラウマのモデルについて。
なにか出来事があり、トラウマを受けたとき、
このような図解で説明されることがあります。
・トラウマの渦が出来たとき、必ず、それに対応する回復の渦が出来る。
ここでは、黒(赤)色がトラウマの渦、
青色が、回復の渦。とします。
一般的に、心理セラピーや感情のワークは、
黒色のトラウマの渦、問題点や、感情を
感じさせようとします。
トラウマの渦に深く深く引き込まれていきます。
ここには、リソース(回復のための力)がなく
回復はありません。どんどん、深みに入っていく。
しかし、この方向性を続けていくと、
感極まって、泣いたり、、ときには叫んだり、します。
これを解放だ!と、見られたりするようですが、
完全に間違いです。
(※涙について、
このように活性化が高まり崩壊するときに泣く涙はNGですが、
静かに流れ、落ち着く方向に向かう涙は、ただしい解放のサインです。)
これは、何が起こっているかというと、
神経系は、活性化を高め負荷エネルギー(本来は解放したい)はどんどん溜まっていきます。
あるとき、限界値、許容範囲を超えたとき、システムは崩壊して停止します。
そのとき、脳内麻薬が出たり、ホヤーッと現実感を失ったり、
平和を感じたりするかもしれません、しかし、
これは、許容を超え耐性を超えた、システムの崩壊です。
負荷エネルギーは余計に溜まり、より悪い状況です。
通常システムは、活性化して脱活性化することで健康を保ちますが、
脱活性化のない状況で、どんどん活性化状態を高めていく。。
神経系はより柔軟性を失います。
先に挙げた2つのトラウマからの解放の要点2つともが
失われています。
(・溜まった負荷エネルギーを解放すること。
・活性化して負荷が高まったら、自然と脱活性化し安全な日常に帰ってくる、、柔軟な神経系を取り戻すこと。)
**
では、体へのアプローチによるトラウマワークでは
どのようなアプローチをするのでしょうか?
ここではSE(ソマティックエクスペリエンス)を
見てみましょう。
2つの要点をあげましょうか。
・問題(トラウマ)に取り掛かる前に、リソース(回復の力)を育てる。
・問題を直視し過ぎないこと。ほんの少しだけみる。少しだけの解放を促す。少しだけ(!)。
図の右の黒い人で表したように、
問題を直視すると、一気に深いトラウマにまで到達してしまい
許容範囲のない人は、何かが噴出してきたり
余計にトラウマ化されてしまう危険があります。
SEでは、左の緑の人で表したように
回復の渦と、トラウマの渦を行ったり来たりし、
(赤色と青色の渦の間で、解放が起こります。)
徐々に少しずつ少しずつ何度もセッションを重ねて
少しの解放を行い、青色の回復の渦を強化し、
少しずつトラウマを掘り下げていきます。
かなり、少しずつ注意して。。
ですので、
トークセラピーなどで感情や問題をどんどん深掘りさせていくワークを見聞きすると
こわい!と思います。
**
さて、しかし!
これは、神経系の観点だけから見た
原理原則であって、これが全てだとは、
私は思っていません。
。。
とくに、人間の体の全体を、
物理的な体を含めた、
もっと精妙な命の法則をもった
世界観では、SEの神経系だけのお話は
当てはまりません。
。。
なので、
それぞれのワークには、
この神経系の領域以外の領域で、
なんらかの癒しが起こっていることは、ありうると思います。
ただ、このSEの観点は、
物理的な体を持った存在である
我々の、回復の過程には、知っておくと良いと思います。
神経系だけではなく、
体の全体からみたトラウマののお話は
またこんど。
トラウマを抱え、
それを解決する。
この現象を、
神経系のエネルギーのやりとりとしてみると。。
**
・トラウマ化の段階
先の記事の、しろくまくん。
動画がありましたね。
(11:40から、しろくまをヘリで追いかけ、麻酔銃を打ち込みます。 13:18あたりで、しろくまが麻酔から覚める様子が撮影されています。)
全力で逃げていて、麻酔で凍りつく、、。
そして、
麻酔から醒めるときの
震えや深呼吸、、で、負荷エネルギーを解放して、
日常に帰ってきました。
その、負荷エネルギーを解放できなかったなら、
そのエネルギーを抱えたまま、日々を生きていくことになります。
これは、しんどい。
トラウマ化された。
**
・トラウマセラピーへの耐性
その負荷エネルギーを
セラピーなどによって解放する、
そこで、見極めなければならないのは、
その方はどのくらいの負荷に耐えられる
神経系を持っているか。
つまり、どのくらいの
しんどさに耐えられるのか。
です。
**
・器(神経系の耐性/適応力)を育てる
トラウマを扱うには、
その感覚や感情、痛みや出来事に対して、
いま、ここに自分を保っていることが必要です。
扱うトラウマが、その人の今の身体システムにとって
大きすぎる時、
圧倒されてしまいます。
神経系は、負荷エネルギーを解放する「脱活性化」に至ることができず、
さらに活性化が高まり、、泣いたり、、叫んだり、圧倒されるような感情が出てきたりします。
さらに、さらに、刺激を与え続けると、やがて、、。
その場から乖離する、
さらに高い負荷エネルギー状態である凍りつき状態に至ります。
なので、
扱うトラウマ(悪い事)は、十分に小さいことが必要不可欠です。
扱えるトラウマは、
その人の神経系の許容範囲によります。
その許容範囲を器として表すと、、。
器が大きければ大きいほど、
その中に入る、つまり、扱えるトラウマに耐性を持っているという事。
その器(神経系の柔軟性)が小さいうちは、
十分に小さなトラウマを扱う必要がある。
十分に小さなトラウマを扱う事で、
何をしているのかというと、
ほんの少しだけの、エネルギーの解放と
ほんの少しだけの、脱活性化のパターンの学習です。
(パターンとは、、柔軟性を欠いた神経系とは、少しの刺激で一気に活性化が高まってしまう状態です。すぐ泣くとか、すぐいっぱいいっぱいになってしまう。とか。そのすぐに乱れる神経系のパターンを少しずつ変えていく、つまり、活性化が高まっても、脱活性化するような新しいパターンを体で覚えていく、というプロセスです。時間がかかります。少しずつ、少しずつ。わたしは、2年半かかって、すこし回復した。あとは、ボディワーク、ロルフィングやバイオダイナミクスで回復してきました。)
外界からの刺激ですぐに圧倒されてしまう神経系から、
より柔軟に適応できる対応力のある神経系、
つまり、より大きな器になるように、器を育てている。
※一気に解放させたり、問題を掘り下げすぎると、
余計に神経系は乱れ、トラウマは追加されていきます。
器を壊してしまうのです。
嫌な感覚や問題点(トラウマ)を見るという事は
どれほど注意が必要か、
わかるでしょうか。
**
・いいところだけ、見ていてもトラウマ化される
悪いところ(トラウマ)を掘り下げすぎると、
再トラウマ化されてしまうといいました。
では、いいところだけ見ればいいのか、
というと、それでもトラウマの渦に引き込まれてしまう危険性があります。
先の記事で書きましたこちらの図、
黒(赤)い渦のトラウマを掘り下げると、どこまでも強いトラウマに引き込まれていきます。
同じように、
青い渦(回復の力、リソース)を掘り下げていくと、、どうなるか。
こちらもどんどん強い刺激、活性化して渦が深まります。
すると、ある時点で、
ひゅいっと、逆の渦に移ってしまう。という現象が起こります。
(それほどトラウマの渦が引き込む力は強いのです。)
つまり、
どんどんいい感覚を追ってそれを強めていくと、
あるとき、
急に逆の嫌な感覚(トラウマ)の渦に移行するのです。
それは、表層の浅い感覚ではなく、すでに青い渦を伝って深層にまで潜ってしまったレベルの
トラウマの感覚に、です。
トラウマに、
圧倒される。
なので、
SE(ソマティックエクスペリエンス)など
トラウマセラピーでは、
良い感覚にフォーカスし続けるという事も、しません。
**
・トラウマの解放は、振り子で起こる
悪い感覚(トラウマ)も良い感覚(リソース)も
焦点を当てすぎると、再トラウマ化されてしまう。
とすれば、どうすれば安全にトラウマを解放できるのか。
その方法は、
振り子です。
その方法は、
良い感覚(リソース)を感じて、十分に器が育った時
ほんの少しだけ、悪い感覚(トラウマ)を感じる。
すると、トラウマの渦に引き込まれる事なく、
リソースの渦に帰ってくる事ができます。
(ここで扱うトラウマが大きすぎると、リソースの渦に帰ってこられずに、
トラウマの渦に引き込まれ深く入り込んでしまいます。)
図の緑色の∞のルートですね。
これが、その方法です。
このとき、何が起こるかと言いますと、
トラウマの渦から、
リソースの渦に帰ってくる時、
その転換点で、小さな解放が起こるのです。
トラウマを扱えるまで、
十分に器が育った時、できることです。
**
これが、物理的な体、神経系から見たトラウマの扱い方です。
**
・感情や思考や想いから、体に残るトラウマの解放はできない
上記のように、トラウマとは、
体に溜まった未解放の負荷エネルギーだとすると、
感情や思考を掘り下げて、その感覚を味わおうとか、過去に起こった現象理解しようとかする
ということは、
危険であり、解放は起こらない、
ボヤーッとしたり、泣き出したり
解放された、と思っている時は、
実は、余計に負荷がかかり、再トラウマ化され
システムが乖離(凍りつき反応。いま、ここにいない。)している、ことが多くあるようです。
**
では、どうしたらいいのか
SE(ソマティックエクスペリエンス)を学んでみたり、
SEのセッションを受けてみて、どんな違いがあるのかを感じてみるのもいいかもしれません。
が、SEのセッションを受けてみても、ほんの少しずつしか解放しませんので、
よくわからない、かもしれませんが。。
本がいくつか出ているようですね。
わたしが学んでいた頃出ていた2冊はもう絶版でして、
こちらの2冊は読んだ事ないですが。
『身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア』ピーター・A・ラヴィーン (著),
『「今ここ」神経系エクササイズ 「はるちゃんのおにぎり」を読むと、他人の批判が気にならなくなる。』浅井咲子 (著)
**
ただし、体の全体、命の原則はここに全てが収まるわけではありません。
神経系に特化した、SEの原則だけが全てではない。と、思っています。
その話は、またいずれ。
感情や思考ではなく、
感覚、身体感覚を扱う、
つまり、体を扱う。
そのわけは、、。
**
まずは、こういう
考え方をしています。
。。
第一層目。
感覚器官があり、現実を感じる。
身体感覚がある。
第二層目。
感情。
第三層目。
思考。
このように、脳は構成され、
情報は下層から上層に向かって流れていく。
脳の情報処理の流れ。
(たぶん、合っている。)
つまり、
思考がある時、必ず、感情がある。
感情がある時、必ず、身体感覚がある。
**
思考や感情があるとき、
その元となっている
身体感覚が、必ず、存在する。
その大元を
扱う事が、必要。
いくら感情や思考へ
アプローチしても
元となる、感覚を扱わなければ、
根本解決はない。
という、
神経系から見た
感情や思考の見方。
身体感覚、つまり、
体を扱わなければ。
**
感覚、つまり、体。
体、つまり、神経系。
としたとき、
神経系と
感情や思考との関連は?
**
動物には3つの神経系のモードがあります。
・安全モード
(日常、安心、安全、社会生活を営む、人とのやりとり、自由なコミュニケーション。神経系は落ち着き、活性化は低い。負荷エネルギーは低い。)
・逃走/闘争モード
(危機と対面した時、逃げる/闘う。神経系は、興奮し、活性化する。エネルギーは拡大していく。)
・凍りつきモード
(死んだふり。逃げる/闘う反応で、敵から生き延びる事ができなかったとき、最後の手段として、死んだふりをする。凍りつき反応、気絶、フリーズ。この状態は、逃げる/闘う事で神経系をめぐるエネルギーが拡大し、許容範囲の上限値を超えると、いきなりシャットダウンする。振り切れた状態。活性化のエネルギーは、超高い!カチカチまたは弛緩して死んだようになっているが、神経系のエネルギーはありえないほど高い状態。)
**
危機的状況(逃走/闘争モード)や、
解離状態(凍りつきモード)、、
それに対して
落ち着いた状態(安全モード)。
このそれぞれの
神経系の状態と、
思考や感情の関連は
どうなるでしょうか?
そう、思考や感情は、
感覚、体、神経系の状態と
連動していると
思いませんか?
たぶん。
活性化が高く、逃走/闘争モードのとき
不安、イライラ、悲しい、怒り。
活性化が超高く、凍りつきモードのとき
ぼーっとして、人とやりとりできない。
うまく話せない。
頭が熱くて、現実感がない。
生きている感覚がない。
寝ても寝ても寝ている。ただ、動けない。
体(神経系)を扱う事、
それが、
根本の解決への道になる
可能性の理由は、
ここにもあります。